序文
ならびにサンスクリットの転写方式についての説明
書類名:『インド仏教文学研究史』(電子版)
著者:岡野潔 Kiyoshi OKANO
電子版 Version 1.0 (Mac 用) の作成日:1998年8月23日
Version 1.1 の作成日:1998年8月29日
本書を父母とMichael Hahn 先生に捧げます
この書の著作権は岡野潔(九州大学人文科学研究院教授)にあります。
著作者の承諾なしに勝手に書き変えることを禁じます。
ここで電子文献として発表するのは十年前につくられた旧ヴァージョンの原稿です。従って、1992年より後の新しい論文や出版情報は、どんなに重要なものでも、一切入っていません。しかし現在、私はドイツで集めた資料をもとに大改訂を行う予定で、その修正作業を行っています。その作業の結果できた新ヴァージョンを将来、この旧ヴァージョンに置き換えてゆくつもりです。新ヴァージョンは、インターネットのこのホームページで公開するつもりです。その後もどんどんこの書類を改良し、年毎に成長させ、世界中の研究の進展に遅れないようにしてゆきたいと思っています。植物のように成長できること、これが電子情報の強みです。
新ヴァージョンをより良いものにしてゆくために、皆さんの協力をお願いします。この旧ヴァージョンの内容に誤りを発見しましたら是非、電子メールで私の許にご連絡下さい。また、インド仏教文学の分野にかかわる論文を研究者が公表しました時は、どうか抜き刷り1部を筆者の許に送ってくださるよう、お願い致します。
本書がめざすような、英・独・仏などの外国語で書かれた諸論文の内容紹介を中心とした、将来にわたる、データベース構築の計画に賛同し、協力してくださるよう、お願い致します。
私の電子メールのアドレスはokano@lit.kyushu-u.ac.jpです。
抜き刷りの送り先は
812-8581福岡市東区箱崎6丁目19番1号
九州大学文学部
岡野潔 宛にお願い致します。
この書(旧ヴァージョン)は私が東北大大学院時代に、博士論文を書く以上の労力と時間を費やして書いたもので、私の第2の博士論文ともいうべき作品であり、青春の思い出です。ドイツに留学する前に書いたもので、当時の私は英語やフランス語と比べてドイツ語の読解力がまだ弱かったために、ドイツ語の論文の内容紹介の記述に思わぬ誤りがあるかもしれません。私は今後時間があれば、少しづつ原典を読み返して、記述を再確認してゆくつもりです。またDr. Michael Hahn 先生の業績を紹介した箇所は、今読み返すと実に不満足な出来で、弟子として将来全面的に書き直さなければならないと痛感しています。
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本書の利用価値は次の点にあります:
1)西洋の学者の論文・業績の紹介。
2)現存するサンスクリット写本の徹底的な調査。
本書の特徴は態度の「愚直さ」にあります:1)の執筆に際して、筆者は日本の有名図書館を歩き、ほとんどの論文を実際に入手し、目を通して書きました。また2)の執筆に際しては、入手しうる世界中の写本カタログのほとんどを集め、ネパールのカトマンドゥまで行って写本調査を行いました。
すべての項目の執筆を、筆者は独力で行いましたが、作業の仕方、本や写本の調べ方については大学の先輩たちの助言を仰ぎました。特にサンスクリット写本の調べ方については、当時東北大の助手であった奥山直司さん(高野山大学助教授)に手とり足とり教えていただきました。また作業の初期の段階において、長友泰潤さん(南九州大学教授)と佐々木雅文さん(宮城県高校教諭)に手伝っていただきました。
本書に盛り込まれた写本情報をきっかけに、もっと日本においてインド仏教文学のサンスクリット文献の校訂や研究を手がける研究者が増えることを希望します。特に本書の後半の部分において、未知の文献の写本が沢山あることがおわかりになると思います。
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サンスクリットの特殊文字は次のように変換しました:
長音のaはaa, 長音のiはii、長音のuはuu。母音のr は#r、母音のlは#lです。
子音は:
k, kh, g, gh, +n
c, ch, j, jh, %n
#t, #th, #d, #dh, #n
t, th, d, dh, n
p, ph, b, bh, m
y, r, l, v
%s, #s, s
h
Visargaのhは#h、Anusvaaraのmは#mです。
次に、ヨーロッパ語の表記について:
ウムラートの付くa, i, u, e, oはそれぞれ%a, %i, %u, %e, %oとしました。
アクサン・テギュの付くe は+eとしました。
アクサン・シルコンフレックス(^)の付くa, i, u, e, oは$a, $i, $u, $e, $oとしました。
アクサン・グラーヴ(`)の付くa, e, u は#a, #e, #uとしました。
セディーユのついたCは、サンスクリットの口蓋音のSの代用として用いられるため、%Sと表記しました。
サンスクリットの転写に、上村方式、東大方式、相場方式やITransやMBhやPali96などの転写方式はいずれもあえて使いませんでした。ヨーロッパ語を含めたテキストでサンスクリットの特殊文字を一括変換をする際の安全性を考えてのことです。
『インド仏教文学研究史』(電子版 Version 1)
内容目次
1 仏伝文献
1.Mahaavastu Avadaana
2.Sa+nghabhedavastu
3.Lalitavistara
2 仏教詩人A%svagho#saの著作
0.A%svagho#saの著作の概観
1.Buddhacarita
2.Saundarananda
3.%Saariputraprakara#na
4.Vajrasuucii
5.Ga#n#diistotra-gaathaa
6.Raa#s#trapaalanaa#taka
7.三啓経
8.その他のA%svagho#sa作と伝えられる作品
3 仏教詩人Maat#rce#taの著作
1.Mahaaraajakani(#s)kalekha
2.Catu#h%sataka-stotra(Var#naarhavar#na)
3.%Satapa%ncaa%satka-stotra
(Prasaadapratibhodbhava)
4.Anaparaaddha-stotra
5.Sugatapa%ncatri#m%sat-stotra
6.Pra#nidhaanasaptati-gaathaa
7.その他のMaat#rce#taの作品
4 Jaatakamaalaa文学
A. Campuu的な仏教文学作品
0.概観・サンスクリット仏教説話文学の発展
1.Sa+nghasenaの*Bodhisattvaavadaana(菩薩本縁経)
2.Kumaaralaataの
Kalpanaama#n#ditikaa
D#r#s#taantapa+nkti
B. Jaatakamaalaa文学
0. Jaatakamaalaa類
1. Aarya%suuraのJaatakamaalaa
(付)Jaatakamaalaa以外のAarya%suuraの作品
(1)Subhaa#sitaratnakara#n#dakakathaa
(2)Paaramitaasamaasa
2. Haribha#t#taのJaatakamaalaa
3. GopadattaのJaatakamaalaa
5 CandragominとHar#saの仏教戯曲、その他
1. Candragominの Lokaananda
(付)Candragominの%Si#syalekha
2. Har#saの Naagaananda
(付)Har#saの仏讃1
Har#saの仏讃2
3. その他の仏教詩人の作品
4.parikathaa
6 Avadaana文献
§1.初期のAvadaana集成
1.Avadaana%sataka
2.Karma%sataka
3.Divyaavadaana
@ (付)Divyavadanamala
4.漢訳で伝わる初期のAvadaana集成
5.チベット大蔵経の中の単立のAvadaana
§2.中央アジアとギルギット出土のAvadaana
A.中央アジア出土のAvadaana
B.ギルギット写本の中のAvadaana
§3.中世のAvadaana集成
A.K#semendraのBodhisattvaavadaanakalpalataa
B.Avadaanamaalaa類
内容
1.A%sokaavadaanamaalaa
2.Bhadrakalpaavadaana
3.Kalpadrumaavadaanamaalaa
4 .Mahajjaatakamaalaa
5 .Ratnaavadaanamaalaa
6 .Ratnaavadaanatattva
7.Vrataavadaanamaalaa
8.Sambhadraavadaanamaalaa
9.その他のAvadaanamaalaaの写本
C.Avadaanamaalaa類以外のavadaana集成
内容
1. Dvaavi#m%satyavadaanakathaa
2. Kapii%saavadaana, Kavitaavadaana
3. Ma#ni%sailamaahaatmya
4. Vicitrakar#nikaavadaana
5. Sarvaj%namitraavadaana
6. Sugataavadaana
7. Svayambhuupuraa#na
(付)%Saakyamunibuddhasya Puurvajanma-
dvaatri#m%saj-jaataka
D.単立のAvadaana
内容
1.Ka#thinaavadaana
2.Kaartikavrataavadaana
(AhoraatravratakathaaとKaartikavratakathaaの2話)
3.Citravi#m%satyavadaana
= Lak#sacaityavrata-%S#r+nganbheriikathaa
4.Caityapu+ngala (Caityapu+ngava)
5.Pi#n#dapaatraavadaana,
Pi#n#dapaatraavadaanakathaa
6.Ma#nicuu#daavadaana
7.Saccaka#taavadaana,
Saccak(r)ataa#danaavadaana
8.Sucandraavadaana
= Vasundhaaraavratasarvavidhaana,
Vasudhaaraakalpaavadaanasuutra
9.Sumaagadhaavadaana
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