3.その他の仏教詩人の作品

 1.J%naanaya%sas作のJaatakastava

 J%naanaya%sasによるJaatakastavaは梵本とチベット訳が存在する。梵本は%Saarduulavikrii#dita調で綴られた20詩節から成る。第5〜第18の各詩節はそれぞれ1つのjaatakaを想起せしめ、仏陀の前世を讃歎する。作者の名は梵本の末尾に、jaatakastava aacaaryaj%naanaya%sasa#h と記してあることから知られる。

 H. W. Bailey(1938)は<註1>、デルゲ版チベット大蔵経テンギュル部に収められているJaatakastavaのチベット訳を調べて、それが梵文とチベット訳の対訳本になっていることに気付き、梵文とチベット訳の校訂テキストを発表した。

 D. R. Shackleton Baily(1954)は<註2>、先にH. W. Baileyが用いた東北大学デルゲ版の写真をもう一度用いて、梵文の再校訂を行い、英訳を付した。

 なお、Jaatakastavaは、同名の作品がホータン語の写本として存在するが、梵本とは全く別の作品である。ホータン語のJaatakastavaは169詩節を有し、51種のjaatakaについて語っている。何らかの梵語の原本からの翻訳らしいが、自由な創作である可能性もある。その写本 (Ch. 00274) は、M. A. Stein卿によって敦煌千仏洞からもたらされた。写本のファクシミリ版はH. W. Bailey(1938)の<註3> Codices Khotanensesの中に出され、またローマ字転写はH. W. Bailey(1945)の<註4> Khotanese Textsの第1巻で初めになされた。決定的なテキスト校訂と翻訳は、文法・語彙研究と共に、M. J. Dresden(1955)によって<註5>発表された。

Tib.: Toh 1178, Pなし, N(T)なし

Ye-%ses grags-pa 造; Dharmapaalabhadra 訳

 2.Sarvarak#sita作のMahaasa#mvartaniikathaa

 BSP ca247(2-168)の写本記事から、この作品は6つの章(kaa#n#da)から成り、各章は4つの休止 (vi%sraama) つまり節から構成されていることが知られる。全部の24の休止には、それぞれ題名が付けられている。作者はSarvarak#sitaである。BSP t#r362(2-169)の貝葉写本には、sa#mvat 544年(西暦1424年)の筆写であることが記されている。筆者(岡野)が校訂中。

Skt.MSS.:

BSP t#r362(2-169) = NGMPP-Card A38/12 = Bir 147 = Durbar p.30 [palm leaf, 24 fols.(fol. 2-25), N.S. 544] [→A];

NGMPP-Card B97/8(= pa66)[39 fols., N.S. 782] [→B];

BSP t#r650(2-170) = NGMPP-Card A132/7 = A922/2 = Bir 148 [38 fols.] [→C];

BSP ca247(2-168) = NGMPP-Card B109/23 [48 fols.] [→D];

NGMPP-Card E492/42 [27 fols. (fol.1-27)] + E493/10 [7 fols. (fol. 28-30)] [→E]

Institut de la Civilisation Indienne [→F]

 3.Anuruddha作のAnuruddha%sataka

 12世紀初頭にセイロン僧Anuruddhaの作った、Anuruddha%sataka(アヌルッダ百頌 )は、101詩節から成る梵語の仏讃である。内容についてはKarunaratna(1965)の<註6>解説がある。テキストはセイロン版があり<註7>、またC. A. Seelakhandha(1900)の<註8>、梵語の注釈をつけた出版本がある。

Skt.MSS.: NCC, Vol.1, p.213を参照。

 4.Raamacandra-bhaarati作のBhakti%sataka

 西暦13世紀前半にインドからセイロンに渡ったRaamacandra-bhaaratiの作った、Bhakti%sataka(信仰百讃)は、107詩節から成る、仏陀へのbhakti(宗教的熱情)をうたった梵語の韻文作品である。

 その梵文テキストはH.%Saastrii(1893)により<註9>英訳を付して発表され、次いでC. A. Seelakhandha(1896)が<註10>梵語の注釈をつけてインド仏教聖典協会から出版した。セイロン版 も2種類出ている<註11>。

 内容についてはK. D. Somaratne(1968)の<註12>解説があり、また真野龍海は和訳ならびに研 究を発表している<註13>。

 詩作を得意としたRaamacandra-bhaaratiにはこのほか、26種類の韻律の見本を示すために、彼の在世当時のセイロン島の王族や長老の姿を綴って見せた、V#rttamaalaakhyaa という52詩節で出来た梵語の作品がある。V#rttamaalaakhyaaのテキストはC. A. Seelakkhandha(1894)によって<註14>紹介された。

 5.Buddhagho#sa作のPadyacuu#daama#ni

 Padyacuu#daama#niは仏陀の生涯を綴った全10章から成るmahaakaavyaである。作者 Buddhagho#saacaaryaの素性・年代は不明。テキストはRanga Acharya & Kuppuswami Sastri(1921)によって<註15>注釈を付して刊行された。梵文写本はインドに多数存在する。現在筆者(岡野)が翻訳を用意している。

Skt.MSS.: NCC XI, p.157をみよ。

 6.Nathamala作のBuddhacaritra

 %Saastrii No.118とSBLN pp.78-79にBuddhacaritraという作品の写本があるが、馬鳴の作ったBuddhacaritaではなく、Nathamala (或いは Naathuraama Brahmacaarii) という名のベナレスに住む托鉢僧がSa#mvat 1755-1767年(西暦1698-1710年)に12年がかりで作った作品である。

Skt. MSS.: %Saastrii 118 [100 fols.]; SBLN pp.78-79 [81 fols.]

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