Jaatakamaalaa類

 Jaatakamaalaaというジャンルは、義浄の南海寄帰内法伝の記事によって、7世紀インドで絶大な人気があったことが報告されている。義浄は次のように語っている:「時に戒日王 (%Siilaaditya) 極めて文筆を好む、乃ち勅を下して曰く、諸君但し詩讃を好む者有らば明日旦、咸将て朕に示せと。其の総べ集むるに及び五百夾を得、展べて之を閲するに多く是れ社得迦摩羅 (Jaatakamaalaa) なり。方に知る讃詠の中には斯れを美の極と為すことを。南海の諸島十余国有り、法俗を問うこと無く皆諷誦すること前の (= Maat#rce#taの) 詩讃の如し而も 東夏未だ曾て訳出せず」。JaatakamaalaaはAarya%suuraの作品として特に有名であるが、義浄は聖勇 (Aarya%suura) の名を出さずに、ただ社得迦摩羅 (Jaatakamaalaa) といっているため、ここではジャンルとしてのJaatakamaalaa類の人気が述べられているとみてよい。

 チベット大蔵経のテンギュル部にはJaatakamaalaaの作品が2つ入っている:

 東北No.4150 Jaatakamaalaa (作者名Aarya%suura)

 東北No.4152 Haribha#t#tajaatakamaalaa (作者名Haribha#t#ta)

さらに11世紀、BodhisattvaavadaanakalpalataaにSomendraが付けた序詩に、

   aacaaryaGopadattaadyair avadaanakramojjhitaa#h /

   uccityoccitya vihitaa gadyapadyavi%s#r+nkhalaa#h // 7 //

   ekamaargaanusaari#nya#h para#m gaambhiiryakarka%saa#h /

   vistiir#navar#nanaa#h santi Jinajaatakamaalikaa#h // 8 //

  (ゴ−パダッタ師などの人たちによって、アヴァダーナ集の順序を捨てて、
集められるべきものを集めて、作られた、勝者のジャータカマーラー類は、
散文と韻文のどちらにも束縛されないものであるが、
しかし1つの様式に従ったものであり、深さのために難解であり、
詳細な叙述をもつものである。)

という詩節があり、Gopadattaという人物も、Jaatakamaalaaの作者の一人であったことが知られる。Jaatakamaalaaの作者には、具体的にこれで、Aarya%suuraとHaribha#t#taとGopadattaの3人がいたことがわかったわけである。

 このうち、Aarya%suuraのJaatakamaalaaについては、Hodgson収集写本を初めとするいくつかのネパール写本によって、そのテキストが知られ、19世紀後半より研究がなされてきた。一方Haribha#t#taのJaatakamaalaaはチベット訳によってのみ近づくことができるのみで、実質的 な研究はほとんどなされなかった。Gopadattaの作品に至っては、名しか知られていなかったといってよい。ところが近年、ネパールのアヴァダーナ集の写本の中に、Haribha#t#taのJaatakamaalaaの一部が、Gopadattaのものと思われるJaatakamaalaaの一部と一緒に、入っているのが発見されたため、一挙に学者の注目を集めるに至った。発見者のHahnを中心とするグループは、それ以来継続的に研究を発表してきている。Haribha#t#taとGopadattaのJaatakamaalaaの梵文テキストはすでにいくつかの章が発表され、Aarya%suuraのJaatakamaalaaとの比較がなされている。

 それでは、Jaatakamaalaaというジャンルに共通する様式とはどのようなものであろうか。Haribha#t#taもGopadattaも、恐らくAarya%suuraの作品を意識して、それを様式的に模倣することによって各自のJaatakamaalaaを作ったと思われる。そのため、3者は様式の上できわめて類似する。その共通項をJaatakamaalaa類の定義とも見做すことができるであろう :

 (1)Campuuという、洗練された散文と技巧的な韻文を交互に組み合わせる技法を用いていること。

 (2)Jaatakamaalaaという作品名を自ら持つこと。

 (3)全部で34章から成ること。

 (4)仏教徒の説話(jaataka, avadaana)から素材を取り、その文学的改作を目的としていること。

 (5)各章は特に始まりと終わりにおいて一定の形式に従っていること。すなわち始まりにおいては、(a) 冒頭にモットーがあげられ、(b) tadyathaanu%sruuyate という導入句で物語が散文で始められる。終わりにおいては、(c) 物語の結びが韻文でのべられ、(d) tad evam の定型句で初まる散文で道徳的結論が語られる。

 Jatakamaalaa類が7世紀には大変な人気があったことは上でのべたが、3つのJatakamaalaaの成立年代としては、

  Aarya%suura のJatakamaalaa ‥‥2〜3世紀

  Haribha#t#ta のJaatakamaalaa ‥‥4〜5世紀

  Gopadatta のJaatakamaalaa ‥‥6〜7世紀

と、大体推定されている。

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